AIでなんでもできる時代だからこそ、専門性の価値が上がる
マーケターとAIは切っても切れない関係になってきたなあと感じたのは、転職活動です。昨年11月から会社員をしていますが、この半年の間に、2回転職活動をしました。1回目は2025年の秋。2回目は2026年の冬~春。

転職活動で見えた「AIの扱われ方」の変化
1回目の転職活動のときは、面接でAIについて聞かれることはそれほど多くありませんでした。あっても、使っているかどうかを確認される程度。2回目のときは、AIをどのくらい使い込んでいるか、かなり踏み込んで質問されることが多かったです。
正直なところ、私は「AIを業務で使えない会社では働けない」と思っているので、その変化に少し安心しました。会社としてアカウントを契約しているか、どこまで活用しているか。そういった話が自然に出てくることで、私にも企業にも双方にとって選択するか否かの判断材料になっていたように感じます。
AIを使いこなしている企業とのやり取り
面白い体験もしました。私が選考過程で提出した選考課題を、ある企業はGeminiを使って分析し、「(あなたは)こういう思考プロセスですよね」とフィードバックされたことがありました。
帰宅後、面接で聞いた話と私の課題をGeminiに入れてみました。「Geminiで私の課題を分析すると、企業側では私をどういう視点で分析し、人材として判断しましたか?」と。Geminiは「その企業と同じ返答は出せませんが、Geminiの判断基準では、おそらく○○の視点であなたを分析し、○○と認識したと思います」と返答をくれました。
総合すると、面接の答え合わせのような回答になっていました。すごく腑に落ちましたし、その企業が私をどう評価して選考を通してくださったかがわかって、興味深かったです。
やはりAIを使い込んでいる企業の方と話すのは楽しいし、そういう環境で働きたいと改めて思いました。
AIが広がる中で感じた違和感と専門性
一方で、違和感を感じる場面もありました。「エンジニア領域もAIを使って日常業務としてやってほしい」と言われた企業も。要は、マーケティング部門にエンジニアのリソースを割けないから、マーケ施策はAIでエンジニア領域の対応までしてほしい、という話です。
たしかにAIで対応自体はできなくはありませんが、非エンジニアが日常的にそこに踏み込むのが業務になるのはちょっと違うなあと思ったので、その企業は私には合わないかも……と感じました。私はエンジニアと話したい(笑)。
記者じゃない方がAIで記事を書いて「私にも書けた」という文章と、長年記者をやってきた方の記事は、温度と密度が違います。その違いが、私は専門性だと思っています。
マーケティングも同じで、マーケターがいなくても、マーケティング施策はできます。でも、どこか違和感がある。AIは人間よりもはるかに多くの情報をもとに、筋の通った施策を出してくれますが、それでも、その施策が本当に機能するかどうかは、また別の話です。
- なぜこの施策なのか
- どこに違和感があるのか
- 何を優先するのか
AIのアウトプットから何を選び、どう使い、どう判断するのかが、これから価値が大きくなっていくと思っています。専門性は、何かができることそのものではなく、「どのように考え、どのように判断するか」に宿るものだからです。
AIを「使うかどうか」から「使いこなせるかどうか」へ
今回の転職活動を通して感じたのは、AIを「使うかどうか」の話ではなく、「どこまで使いこなしているか」で差がつき始めていることでした。
実際、パーソル総合研究所の「生成AIとはたらき方に関する実態調査」でも、業務で生成AIを使っている方は約3割に留まっていて、日常的に使いこなしている方は1割強に過ぎません。加えて、生成AIの活用度が高い方ほど、業務の効率性やアウトプットの質との相関が高いという結果も出ています。
※参考:パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」
つまり、AIは広がってきているけれど、「使いこなしている方」はまだ少ない。しかし、その差はすでに成果に影響し始めている、ということです。
AIはとても優秀ですが、何を出してくるかは、結局「誰がどう使うか」によって変わります。だからこそ、「その方が何を持っているか」が、そのまま出るようになった気がしています。

