コンテンツの磨き方

いいコンテンツとは何か

いいコンテンツとは何か
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「いいコンテンツを作りたい」

よく聞く言葉ですが、「いい」の定義は人によって違います。SEO視点からは「検索上位に表示される記事」、マーケティング視点では「コンバージョンにつながる記事」、編集視点では「読者に価値を提供できる記事」となります。

いいコンテンツの先にある本質的な願い

私は出版社での編集者経験を経て、WebやSNSのコンテンツ制作もしていますが、多くのクライアントへのインタビューを重ねるなかで気づいたことがあります。

「いいコンテンツ」という言葉の奥には、本質的な願いが隠れている点です。たとえば、こんな願いです。

「自社の価値を正しく伝えたい」
「読者の悩みを本当に解決したい」
「長く読み継がれる記事を残したい」

目に見える形にすること

あるクライアントからこんな相談を受けました。

「うちのサービスの良さが、なかなかWebサイトで伝わらないんです」

一見ライティングの技術的な課題のように見えます。詳しく話を伺うと、より深い課題が見えてきます。お客様に自分の商品やサービス説明をするときの話し方、商品開発に込めた想いや経緯、実際に使ったお客様の反応など、Webサイトには書かれていない「本当に伝えたいこと」が次々と出てきます。

そして、これらはどこにも書かれていないのです。あるのは、「こんな方におすすめ」という対象顧客や「仕様」「使い方」「効果・効能」だけなのです。その背景は書かれていません。これでは伝えたいことも伝わらないですよね。

いいコンテンツとは、単にSEOの基準を満たすことでも、きれいな文章を書くことでもありません。自分の商品やサービスの本質的な価値を言葉にして、お客様の目に見える形にすることなのです。

自分の商品やサービスを説明するのが難しい理由

多くの方が「自分の強みをうまく説明できない」と悩みます。でも、それは当たり前のことです。

どんな方でも、自分の専門分野について話すとき、無意識に「相手も知っているはず」という前提で話してしまいがちです。業界用語をなにげなく使ったり、基礎的な説明を省いたり。無意識に持っている「当事者ならではの前提」が、伝わりにくさの原因なのです。

また、自分の商品やサービスは近すぎて、客観的に見ることが難しくなりがちです。日々向き合っているからこそ、「なぜそれが価値があるのか」「どんな方に必要とされているのか」という基本的な説明が抜け落ちやすくなります。もちろん、これも無意識です。

ですから、説明が難しいと感じるのは自然なことなのです。だからこそ、それを意識して知らない方の目線に立ち返り、価値を見つめ直すことが大切な視点になります。

「俯瞰」でいいコンテンツの軸をあぶりだす

出版社で編集の仕事に就くと、全体を俯瞰する力、つまり、他の方から見たらどんなふうに見えるかを考えるための、高い視野・視点を持つよう徹底的に叩き込まれます(※会社にもよります)。

「この特集の目的は何か」
「誰に向けて、何を伝えたいのか」
「なぜこの順序で情報を届けるのか」
「読後、読者にどんなメッセージを受け取ってほしいのか/どんな行動を取ってほしいのか」

ひとつの記事、一冊の本を作るとき、常にこういった問いを編集長や先輩から投げかけられます(でききないとボツ)。コンテンツを「部分」ではなく「全体」として捉える訓練にもなります。

例えば、208ページの本を作るなら、

  • もくじの設計と見出し
  • 各章の情報量のバランス
  • 読者の理解度に合わせた情報の配置と流れ
  • 読者に伝えたいメッセージや次に取ってほしい行動
  • 全体の用語統一
  • 全体のテーマに合うデザインや色の選定(トンマナ)

などを俯瞰的な視点で考え、整理します。これが全体の骨組みとなる構成案になります。

「俯瞰」視点で商品やサービスを説明する

この「俯瞰力」の考え方は、自分の商品やサービスを説明する際にも役立ちます。サービスや商品の価値を伝えるには、

  • 全体像の把握
  • 説明の優先順位
  • 情報の整理と構造化
  • 読後に期待するクライアントの次の行動
  • 全体のテーマに合うデザインや色の選定(トンマナ)

が必要だからです。「俯瞰的な視点」を持つことは、商品やサービスの価値を客観的に見つめ、効果的に伝えることにつながるのです。

俯瞰力で記事を書く訓練の例

余談ですが、新聞記事の冒頭をよく読んでみると、知らない方向けの前提条件が書かれていますので、よかったら意識して目を通してみてください。

起きた日時、出来事、どこで何が起こり、どこの誰が関わっているか。その出来事の背景は何で、今後何が予想されるか……など。次の順に、初めて読んだ方にわかるよう補足説明が、冒頭に詰まっています。

「前提条件→出来事→流れ→結果や今後の展望(結果や今後がある場合)」

記者や雑誌の編集者は、この順に記事を書くことも叩き込まれます。慣れるまでは大変ですが、慣れると楽に記事を書けるようになります。プレスリリースをネタ元として、紹介記事を書いてみると、こういった書き方の訓練になりますので、興味がある方は試してみてください。

コンテンツの本質は「価値の可視化」

いいコンテンツとは、

  • 商品やサービスの本質的な価値を言語化すること
  • お客様目線で必要な情報を整理すること
  • 伝えたい想いを目に見える形にすること

がそろったもの、と言っていいと思います。これらを踏まえていいコンテンツを作るために必要なのは、作り手が

  • 商品やサービスの本質・背景を深く理解すること
  • お客様のニーズや課題を丁寧に理解すること
  • その両者を結ぶ「架け橋」を見つけること
  • わかりやすい言葉で伝えること

です。

「伝わりにくさ」は、むしろ自然なことです。だからこそ、意識的に視点を変え、丁寧に言語化していく。その過程こそが、本当の意味で「いいコンテンツ」を生み出す源になるのです。

書いた人
まてぃさん
「独立して穏やかに暮らす働き方」を軸にデジタルマーケティングの支援を行っています。自分らしさを出せるSEOライティングとか、自分の商品・サービスのよさを伝えるコンテンツの磨き方がメインのお仕事。趣味はキックボクシングと登山。株式会社Rdesign factory代表取締役。
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