コンテンツの質は数字だけでは測れない

数字は重要な指標ですが、コンテンツの本当の価値をいつもの数字だけで判断しないのも大事だと思ってます。
私自身、出版社での編集者時代から現在のWeb領域まで、様々な形でコンテンツの「質」と向き合ってきました。その経験から考えている数字以外の価値についてまとめてみます。

出版社時代のコンテンツの質を測る指標
雑誌や書籍の編集者時代、以下のような指標を重要視していました。
- 刷り部数(最初の印刷部数)と重版(本が売れて増刷になること)
- 読者はがきの数と内容(雑誌のアンケートはがき)
- 読者プレゼントへの応募数(アンケートはがきや自主的なはがき投函)
- 発売日直後の売れるスピード(書店のPOSデータ)
- Amazonのレビュー
これらも数字ですが、単なる数字以上の意味がありました。とくに読者はがきには、その本や雑誌が読者の心にどう響いたのか、リアルなメッセージが書かれていましたので、大切にしていました。プレゼント応募も兼ねているので、当選目的の熱心なメッセージが多かったです。
当時はSNSがなかったので、はがきが主流でしたが、芸能本や雑誌の場合は2ちゃんねるも見てました。今もあるんですかね、アンケートはがき。
Webでのコンテンツの質を測る指標
Webの世界はもちろん数字第一主義です。ユーザー数やコンバージョン以外にも、コンテンツの価値を示す指標があります。
滞在時間と閲覧ページ数
ユーザーがコンテンツに価値を感じ、じっくりと読んでくれている証となるのが、このふたつです。とくに記事を読んだ後、関連記事へと進んでいく流れは、コンテンツへの信頼の表れとも言えます。
最近はGoogleが上位表示するサイトの基準に、このふたつの数字がよいことが挙げられています。滞在時間が短いサイトは上位表示されにくいです。
メルマガやLINEの開封率
定期的な情報発信に対して、ユーザーが継続的に関心を持ってくれているかを示す重要な指標です。配信しても開封されなければ、メルマガもLINEも意味がありません。
開封率はユーザーがそのメディアに対する親和性をどのくらいもっているかの関係性も表します。よく売れている通販サイトは、30-50%の開封率だったりします。
低い直帰率
Webサイトに訪れた人が、他のページも見たいと思ってくれている証が直帰率です。最近はユーザーのサイト滞在時間がどんどん短くなっています。直帰率が低いということは、次のページに遷移したわけで、コンテンツの価値を感じ、もっと知りたいという気持ちの表れとしても見ることができます。
「直帰率が高い=ユーザーの検索ニーズを満たせていない現れ」と見ることもできます。あるいは、サイトの使い勝手や導線が悪い場合もありますが、だいたいは前者です。
リピートユーザーの存在
繰り返し訪れてくれるユーザーの存在がどれだけいるかは、コンテンツに継続的な価値を感じてもらえている何よりの証拠となります。初見ユーザーのみで成り立つサイトは、長続きしにくいです。
また、定期的な更新が行われないと、ユーザーは来てくれませんので、サイト運営がうまくいっているとも言えます。

数字以外の成果指標
「コンテンツの質が高い」と何がいいのか。コンテンツの質は数字には表れにくいですが、今まで関わったなかでの代表的な指標は、次のふたつがある意味成果なのかなと思います。
採用におけるミスマッチの減少
ある企業でのコンテンツ制作をさせていただいた折の話です。自社の価値観や働き方を丁寧に発信するようになってから、採用時のミスマッチが大きく減りました。おそらく、公開したコンテンツを通じて次の価値観が伝わったからだと思います。
- 会社の本質的な価値観
- 実際の働き方
- 求める人材像
ですが、これらを具体的な記事として書いたわけではなく、中にいる方々の考えや日頃の行動をご紹介する形がほとんどです。連載を続けることで、自然と社風や社内のみなさんのお人柄や仕事ぶりが伝わったのが勝因(?)だったんだろう、と関係者一同うなずいていました。予期せぬタイミングで人事担当者の方からメッセージをいただいて、びっくりした記憶があります。
その会社以外でも、やはりこういう反応は多かったです。求人を出したときの応募数の増え方が違った、自社に対する熱量をもった応募者が増えた、とか。
人や仕事の紹介が増える
質の高いコンテンツは、新たな出会いも生みます。これは私自身に限った効果ですが、
- ご一緒したクライアントから知り合いの会社の同様案件のご紹介
- コンテンツの専門性を評価してのご紹介
- 記事を読んで共感した方からDMをいただき、お仕事につながった
など。これは一時的な活動では得られない、本質的な信頼関係が生むものだなと思いますし、とても感謝しています。

コンテンツの質がもたらす本質的な価値
質の高いコンテンツは数字以上の価値をもたらします。
- 読者との深い信頼関係ができる
- 本質的な価値を共有できる(読み続けてくれる読者になってくれる)
- 持続可能な関係性ができる(アンケートの声が次の企画に発展する等)
とか。出版の世界では、一冊の本や雑誌が読者の人生に影響を与えることがあります。私はWebやSNSも同じだと思っています。ユーザーに本当の価値を届けること。その積み重ねが信頼をつくり、次に続く関係性をつくり、お互いが望む成果が得られる道をつくります。
となると、コンテンツは単なるコンテンツではなく、ユーザーとの大切な対話の積み重ねの場となるのです。それが、コンテンツの本質的価値だと思います。それって数字で測れないですよね(まとまった)。