自分の心の定点観測地をもつと、迷いにくい

香川県にある金刀比羅宮(ことひらぐう)、通称こんぴらさんの奥社(厳魂神社:いづたまじんじゃ)。1368段の階段を登った先にある静寂な場所が、私が私の心を観測する「定点観測地」のひとつです。
ここは私が起業すると決めたとき、初めて願掛けした場所でもあります。何かの節目や迷いがあるとき、ふと足が向きます。冒頭の写真は、その厳魂神社です。
迷ったときには、自分を定点観測する「定点観測地」を持つことをおすすめしたいです。もちろん、神社である必要はありません。カフェでも、公園でも、海辺でも。大切なのは、そこに行くと自分の内側と向き合える場所であることです。
そこに足を運ぶと、前回ここに来たときのことを自然と思い出します。あのときの自分はどんな気持ちだったか、何に悩んでいたか。過去の自分と今の自分を見比べることができる場所になります。

定点観測地のいいところ
定点観測地のいいところは、同じ場所に立つことで、変化している自分に気づけることです。景色は同じでも、見ている自分は確実に変わっている。前回ここに来たときは何に悩んでいたのか、どんな気持ちだったのか。そして今の自分はどうなのか。
時間が経つと、人は過去の自分のことを忘れます。でも、定点観測地を訪れると、そのときそのときの自分を思い出すことができます。「あのときはあんなに悩んでいたけど、今はもう大丈夫になっている」とか、「前回よりも迷いが深くなっている」とか。自分の成長や変化を客観視できる貴重な場所になるんですよね。
何年かに一度、場所が自然と変わります。その場所を「卒業」するタイミングが来るからです。私の過去の定点観測地の経緯はこんな感じです。
- 高校
上京のきっかけになった場所なので、就職して数年ぐらいまで行っていました(現在は立ち入り禁止)。 - 大学
出版業界の道を選んだきっかけとなった場所であり、社会人になる前のぐるぐるもやもやをたくさん味わった場所なので。今も数年に一度くらい、思い出して行くことがあります。 - 箱根
社会人になっていやなことがあると、ロマンスカーで箱根→箱根ケーブルカー→芦ノ湖遊覧船→バスで箱根駅→ロマンスカーで帰京のぐるっと一周するだけの移動をよくやっていました。会社を早退して何度行ったかわかりません(時間的にもちょうどいい)。 - こんぴらさん奥社(香川県/厳魂神社)
起業の願掛けを初めてした場所。あと、この場所と“気が合う”と感じています。 - 金時山(神奈川県)
登山トレーニングの成果を確認するために行きます。タイムと脚の疲れ具合で、身体のコンディションや日頃の筋トレ効果がよくわかります。それと、シンプルに景色が好きなので。

頂上で富士山が目視できなかった日。乙女峠では見えました。
頭で考えるか、心で考えるか
私が迷うときは、だいたい頭の中だけでぐるぐる考えていることが多いです。そろばんを弾いているようなイメージ。
心は横に置いて、できることだけをリストアップして、理論的に可能なことをつなげていく。そうしたアプローチでうまくいく方は多いですし、現実的な計算がしやすく、計画を立てて実践すれば、実現もしやすいです。
一方で、現実的な理屈が通っていなくても、自分の内側の筋が通っている状態であれば、私自身は心とイメージで考えたほうが自分に合ったやり方で、行きたい場所に行ける(実現したいことを実現できる)気がします。私の内側(無意識)は、私のことをすべてわかっているからです。
逆に内側が許可していないことは、計算して「理論的に実現可能」の判定が出ていても、ゴールに達しないことが多いです。理論と心が食い違っていると、内側から出るエネルギーが続かないからです。私の場合はとくに、自分の内側にある情熱がすべての源になりますので、その源が枯れると、わりと厳しい状況に陥りやすいからだと思います。
ですから、私にとって大事なのは、
- 自分の内側を整えること
- 自分の内側の声をよく聴くこと
- 頭で計算して行動しようとしているときは、散歩に出かけること
こうして、自分のバランスをとっています。

心で考えたことは、心を動かす
編集者になったとき、先輩から「青写真を描く」ことを教わりました。物事を始める前に、まず完成形をイメージする。この考え方が、今の私の仕事の基盤になっています。「望む姿を思い描く」というタイトルで、その考えを記事にも書きました。
コーチングでも心理学でも、この望む姿を思い描く考え方は共通しています。言葉は違っても、根底にある考え方は同じ。心で考えたことは、心を動かす質の高い成果を生み出しやすいからです。
仕事をしていると、多くの場合、現状からの積み上げで考える傾向があります。「今の状況をよくするにはどうすればいいか」という現状を起点に考える「現状思考」です。
一方、「望む姿を思い描く」という「理想思考」では、まず理想の状態をイメージし、そこから逆算して今することを考えます。「こうありたい」という想いをはっきりさせることで、現状思考では到達できなかった場所に辿り着けることもあります。
なにより、望む姿を思い描くことで心が動くので、そのための行動自体が楽しかったり、やり続けることが楽になることが多いです。

内側の声を聴く場をつくると、気づくことがある
迷いというのは、頭で考えすぎているときに生まれやすいもの。選択肢を並べて、メリットとデメリットを比較して、リスクを計算して。それはそれで大切なことですが、最終的には心とイメージで決断することが、自分らしい道を歩むことにつながりやすいと私は考えています。
自分の内側が許可していることは、たとえ理屈が通っていなくても、きっと続けられます。続けることそのものが、いちばん難しいことです。ですが、内側から湧き出る情熱があると、苦にもならず、自然と続けられます。心が望むことだからです。
それでも、人は迷います。だから、迷ったときは、定点観測地に行き、心を鎮めて、自分の内側の声に耳を傾けてみる。そして、望む姿を思い描いてみる。すると、日常ではない場所だからこそ、気づくことがあります。
現実的な計算も大切ですが、心とイメージで考える時間も同じくらい大切だと思っています。

厳魂神社の紙守札。なんかこれが好きで、毎回いただいてきます。