経験を記事にする具体的な書きかた

先日、どのような経験がコンテンツとして価値があるのか記事を書きました。ですが、経験を持っているだけでは人には伝わりません。それを必要とする誰かの心に響くよう伝えるには、記事にしたり、何らかの表現で目に見える形にする必要があります。
この記事では、自分の経験を活かして、価値を届けるコンテンツの作り方について、実践的なテクニックやコツをお伝えします。具体性をもった「自分だけのコンテンツ」をつくれるようになると、結果として、ブログ運営やSNS発信、セミナー企画など、ビジネス機会の創出にもつながります。

記事内容の考え方
1.ユーザーが知りたい視点から自分の経験を見直す
ペルソナを設定する
まずは、自分のコンテンツを読んでくれる方はどんな方か、簡単なペルソナ(人物イメージ)を設定します。
項目例
- 年齢や性別
- 職業や役職
- 今抱えている課題
- 探している・欲しい情報
- 記事を読むとき、読み手がどんな状態にあるか
たとえば、こんなふうに。
「35歳女性、ECサイトを運営する事業オーナーで、集客に悩みがある。できるだけ低コストで費用をかけずに宣伝する方法を知りたい。通勤電車でスマホで記事を読む」
課題をもった人物の具体的なイメージをもつことで、より的確な内容を作れますし、自分が誰に向かって記事を書いているか、焦点を絞った内容を考えやすくなります。ここが空白のまま書くと、誰に何を伝えたいのかわかりにくい文章になりやすいです。
ちなみに、今私はこの記事を、自分で事業をやっていて、自分の経験をコンテンツにしたり、そのコンテンツを通じて集客したいと考える個人事業主や経営者に向けて書いています。
想定ペルソナの悩みと自分の経験をマッチングさせるミニワーク
- ペルソナが抱えそうな悩みを5つリストアップする
- それぞれの悩みに対して、自分がもっている経験をメモする
- 必要とされやすい順に優先順位をつける
ワークの例
- 悩み:SNSでの発信ネタに困っている
- 関連する自分の経験:自社のSNSアカウントのフォロワーを半年で3倍に増やした時の工夫
- 優先度:★★★★☆(4/5)
2.テーマをひとつ選び、読者を惹きつける記事構成を作る
魅力的な見出しの作り方
見出しには以下の要素を含めると、情報を探している方に届きやすくなります。
- 具体的な数字
「3つの」「5分で」など - 対象読者をはっきり見せる
「個人事業主のための」「初心者向け」など - 感情を刺激する言葉
「驚きの」「意外な」など
感情を刺激する言葉については、個人的にはあまり好みではないのですが、テクニックとしては一定の効果があります。
私があまり好まないのは、刺激的な表現を使うと、刺激を求める方が集まってしまうので、自分とあまり合わないと感じています。穏やかな表現を使うと、人の集まりも穏やかですが、比較的寛容な方が集まる実感を個人的にはもっています。

導入から結論までの流れを設計するテンプレート
私が記事を書くときは、おおむねこの流れを使って書いています。書く文章量に合わせて省略することもあり、短い文章のときは、「結論→解決策→事例→方法→結論」となることが多いです。
- 導入
ユーザーの共感を得る問いかけや具体的なエピソード - 結論
最初に結論を見せることで、「あなたの探し物はここにあります」と示す - 問題提起
なぜこの話題が重要なのか説明 - 解決策
経験に基づく具体的な方法(3〜5点) - 具体例
実際にうまくいった事例/失敗した事例 - 実践方法
ユーザーがすぐに取り組める具体的なステップ - 結論
核となるメッセージや結論を再度強調する
3.具体的な表現テクニックを使う
経験に基づく記事のチェックリスト
書いた記事が、実際の経験に基づいているかどうかチェックします。
□ 具体的な日付・期間・場所を含めているか
□ 数字やデータで裏付けができているか
□ 自分ならではの視点や気づきを入れているか
□ ビフォー・アフターの変化を示しているか
□ ユーザーにとって実践可能な内容になっているか
□ 専門用語を適切に解説しているか
□ 読みやすい文章構成になっているか
私が文章を仕事として書き始めたときは、このリストをよく使っていました。雑誌の記事を書く際は、経験というより、取材によってこれらの情報を集めて記事にします。集めてきた情報+ビジュアル+デザインのバランスを取りながら少ない文章量でわかりやすくまとめる必要があるので、短い文章でいかに端的に伝えられるかを入念に考えます。
それができていないと、校正室から「意味が通りません」とか「話が飛んでいます」等のチェックが入って、修正することになります。ですので、雑誌編集部出身の編集者やライターが書く原稿には、自然とこれらの点が考慮されていることが多いです。
経験をもとにした書き方の例
次の1と2の文章は同じ話をしています。経験をもとに記事を書くことがどういうことか、わかりやすく書き分けてみます。
1.改善が必要な書き方
ウェブサイトのリニューアルをしたところ、効果がありました。デザインを変えて使いやすくしたのがよかったと思います。
2.経験が反映された書き方
2022年4月、創業10年目を機にウェブサイトを全面リニューアルしました。それまでのサイトは情報量は多いものの構造が複雑で、ユーザーテストでは『欲しい情報にたどり着くまでに平均4クリック必要』という課題がありました。
リニューアルでは、『どの情報も3クリック以内で到達できる』という明確な目標を設定。結果、直帰率が42%から27%に改善し、問い合わせ数も月平均15件から37件へと増加しました。この経験から、『情報の網羅性』よりも『アクセスのしやすさ』を優先することの重要性を学びました。
2のほうが個人の経験や視点、何に注力したらどんな結果が出たかが伝わる文章になっていると思います。
1は本当によくある文章で、私がご相談に乗る文章もこういった表現が多いです。前述のチェックリストを使って具体性を加えていくと、2の文章にすることができますので、ぜひ試していただきたいです。

具体的なエピソードで信頼性を高める
経験を伝える際、抽象的な表現では読み手の心に響きません。具体的なエピソードを交えることで、リアリティと信頼性が高めることができます。
日付・期間の効果的な示し方
「以前」「昔」「長年」といった曖昧な表現ではなく、具体的な日付や期間を示します。
×:以前クライアントと仕事をした際、効果的だった方法です。
〇:2019年夏、飲食店チェーンのマーケティング戦略を立案した際に効果を発揮した方法です。
具体的な数字でリアリティを出す工夫
「多くの」「様々な」といった曖昧な表現ではなく、具体的な数字を示します。
×:多くの企業で同様の課題が見られました。
〇:37社のコンサルティングを行う中で、8割以上の企業で同様の課題が見られました。
ビフォーアフターの提示で説得力を増す
経験から得た学びを伝える際、変化のビフォーアフターを示すと、読み手が具体的にイメージしやすくなります。「自分にもできるかも」と感じてもらいやすくなる効果も。
×:この方法で問題を解決しました。
〇:〇〇の導入前は月間100件だった問い合わせ数が、〇〇を導入して3か月実践した結果、450件に増加しました。
失敗を価値ある学びに変換する
失敗体験は、読み手にとって貴重な情報源のひとつです。単に失敗談を語るのではなく、そこから得た具体的な教訓を示すことで価値が生まれます。また、「何を失敗と考えているか」を伝えることで、書き手が大切にしている価値観も伝わりやすくなります。
失敗から得た価値を示す例
最初のウェブサイト制作では、デザインにこだわりすぎて使いやすさを軽視してしまいました。結果、見た目は良くても成約率が低いサイトになってしまいました。この失敗から『美しさと使いやすさのバランス』が重要だと痛感し、その後は必ず使いやすさのテストを実施するようになりました。
そのくらい、サイトの使い勝手は成約率に直結する重要なポイントだと考えています。
これはデザイナーの例ですが、ただ失敗した話を書くとそのまま終わりますが、この失敗によって何を学び、何を気をつけているのかを書いています。それによって、このデザイナーは「成約率の高い使い勝手のよいサイトをデザインする」ことにこだわるデザイナーだと読み手に伝わることになります。

専門性を自然に伝える工夫
専門性を押しつけがましく見せずに、自然に伝える方法もあります。
データをわかりやすく引用する
データを引用する際は、出典を明記し、数字だけでなくその意味も伝えます。
〇〇マーケティング協会の2022年の調査によると、消費者の73%が『ブランドの背景にあるストーリー』を重視すると回答しています。この数字が示すのは、単に商品やサービスの特徴だけでなく、その背景にある想いや歴史を伝えることの重要性です。
この文章の場合、「この数字が示すのは~」以下の部分が、その意味や背景を解説しており、「ただの数字も見る人が見ると、別の情報を含んでいる」ことを示すことができます。
専門用語をわかりやすく解説する
専門用語や難しい概念を説明する際は、言葉遣いにも気を配ります。私自身は、形容詞や接続詞の使用頻度を必要最低限にし、「これ・それ・あれ・どれ」などの指示語をできるだけ使わないようにしています。
使う言葉は常用漢字を基本とし、補助動詞は平仮名で書く(×〜して下さい、×〜致します → ○〜してください、○〜いたします)ことにしています。読みやすさに直結するからです。
また、抽象的な概念を説明する際は、「たとえば~」と具体例を示すことで理解されやすくなります。私は身近な例をできるだけ添えるよう心がけています。この一言を添えるだけで、読み手の理解度が高まりますし、例を挙げられないということは、自分自身に経験がないということでもあります。
例「リードナーチャリング」について説明する場合
×:リードナーチャリングとは、見込み客の育成プロセスのことを言います。
〇:リードナーチャリングとは、見込み客の育成プロセスです。「リードナーチャリングとは、見込み客の育成プロセスのことを言います。
たとえば、友達作りの流れと似ています。最初はクラスで隣の席になって知り合い(認知)、次に休み時間に少し話してみる(初期接触)、それから一緒に昼食を食べたり放課後に遊んだりして仲良くなっていき(関係構築)、やがて何でも話せる親友になる(信頼関係の確立)。
こういった段階的な流れのことです。企業も同じように、顧客とじっくり関係を育てていくことを目指します。
「〇」の文章のほうがわかりやすいですよね。
業界の最新動向と自分の経験を結びつける
時事的な話題や業界の最新動向と自分の経験を結びつけることで、専門性と時代感覚の両方を伝えることもできます。
AIを使っていることを示したい場合
AIツールについて、私自身も3種類のツールを実際のコンテンツ制作に取り入れています。私がよく使っているのは、ClaudeAI、Perplexity、Adobe Fireflyです。AIはアイデア出しや下書きには役立ちますが、業界特有のニュアンスや専門知識の正確さについては人間の確認が欠かせないと感じています。
とか。
もう少し書きたいことがあるので、今日はここまでにします。なっが!
▼続きを書きました。
