課題の本質を見定めるためにコンサル時に気をつけていること

独立してからコンサルティングを業務にしていますが、表面的な課題解決は、一時的な解決にしかなりません。ですから、根本的な課題を見つけ、そこをなんとかしたいといつも思っています。
初回ミーティングで心がけていること
本質的な課題を見定めるために、私が初回のミーティングでする質問があります。
「なんでもできるとしたら、今いちばん何を実現したいですか?」
「最終的にどんな形になったら、理想の状況だと言えますか?」
単純な質問ですが、この質問に答えられる方は少ないです。目の前のやりたいことと本当に実現したいことは、あくまで「今現在なんとかしたい」ことであって、未来につながる一歩ではなかったりします。
また、「恥ずかしいから言いたくない」という反応をいただくこともあります。でも、その「言いにくい本音」に、本質的な課題や本当に実現したい未来がつながっています。
「フォロワーを増やしたい」望みの裏にあるもの
「X(旧Twitter)のフォロワーを増やしたい。プロモーションやキャンペーンを実施したい。一生懸命投稿しているけど、全然伸びないんです」
たとえば、SNSマーケティングについてのご相談では、このような相談をよくいただきます。一見、はっきりした課題に思えます。でも、お話を伺っていくと、
- そもそも、誰にメッセージを届けたいのか
- メッセージを届けたい対象顧客は何を求めているのか
- なぜその対象顧客にメッセージを届ける必要があるのか
これらがぼんやりしていました。過去の広告施策を見せていただくと、こんな特徴が。
- 獲得困難な大規模キーワードの設定
- 20代から60代まで、広すぎるターゲット設定
- 対象ユーザーに望む次のアクションが不明確な広告文
ご相談としては「フォロワーを増やしたい」という課題ですが、本質的には「誰に・何を・どう届けたいかという根本的な戦略がない」ことが、その企業の課題だったのです。
(その企業は、その後、「誰に・何を・どう届けたいか」の根本的な戦略を見直すところから課題設定を行い、最終的にフォロワーを増やす戦略設計と実施を行いました。結果的にInstagramのほうがユーザー層が合っているので、Instagramをメインアカウントに切り替えました)。

出版社での経験から学んだこと
「本質を見定める」姿勢は、出版社での経験が大きく活きています。俳優さんやタレントさん、企業の現場の方など、様々な方に雑誌や書籍のインタビューを行ってきました。とくに痛感しているのは、インタビューは「信頼関係なくして本質は見えてこない」ということです。
インタビューの最初は、カジュアルな会話から始めます。たいてい初対面ですので、お互い「この人は信用できるか」「意図したことを汲み取れるか」を確かめ合う時間が必要だからです。
信頼関係を築くための準備
とくに重視しているのが、事前リサーチです。20代の頃、超有名人へのインタビューで失敗したことがあります。緊張のあまり相手から話を引き出せなかっただけでなく、「そのことは他の雑誌でも何度も話しているから、話したくありません」と言われてしまいました。それ以来、できる限り事前リサーチを行ってからインタビューに臨んでいます。
実際、丁寧なリサーチに基づいた質問をすると、「この人には安心して話して大丈夫だ」と思っていただける瞬間があります。そこから本当の対話が始まります。
事前リサーチによって得られるインタビューには、相手にとっても私にとっても読者にとっても、実りある記事になることが多いです。
- 事前リサーチは相手への敬意となり、相手の信頼を得やすい
- 表面的な情報を超えた質問ができる
- その方らしい価値観や思いを引き出せる
コンサルティングでも同じこと
この経験は、コンサルティングにも活きています。話を伺うことでいかに相手の意図を引き出せるかが大切ですし、心の奥に思っていることを引き出せないと、表面的な課題しか見えてきません。ですから、私が取り組むときに気をつけているのは、次のような点です。
- クライアントの事業内容に対する理解
- 業界特有の課題の把握
- 過去の取り組みの丁寧な確認
- その方(企業)が現時点でもっとも課題に感じていることの確認
表面的な課題に対して解決策を提示することは容易いですが、それでは本質的な解決にはなりません。大切なのは、相手の文脈を理解し、本音で話せる関係を築くこと。そして、共に解決策を見出していく姿勢です。この過程を省くと、本当の意味での解決には至りません。
人によっては、「ただ解決策を示してくれればそれでいい」という方もいます。その場合は、お互いに「私たち、考え方が合わないよね~」という共通認識が最初の時点で生まれますので、本契約前にどちらからともなくさよならしますので、無問題です。

本質を見定めることの価値
コンサルティングにおいて、本質的な課題を見定めることは、ときとして遠回りになることもあります。ですが、この過程を省くと表面的な解決に終わり、同じ課題が繰り返し発生します。同じことを2回も3回も聞かれるのってイヤじゃないですか。同じ問題が起こるのもイヤなんですよね。
大切なのは、
- 表面的な言葉だけでなく、その背景を理解すること
- 相手の文脈に寄り添い、信頼関係を築くこと
- 共に解決策を見出していく姿勢を持つこと
です。これは単なるテクニックではなく、本質を見定めようとする姿勢をもつことで、よりよい信頼関係を築き、効果的な解決策を生む基盤になります。そのことが、結果的に成果につながっていきます。
ですから、コンサルに求められていることは単なる解決策の提示ではなく、クライアントとともに本質的な課題に向き合い、根本的な解決をしていくことです。人によって考えはそれぞれですが、私はそう思ってやっています。そのほうが楽しいし、うれしいです。