コンテンツ制作における完璧主義とのつき合い方
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情報発信をしようとするたび、クオリティが気になってなかなか公開できない。そんな経験はありませんか? たとえば、こんな言葉が頭をよぎります。
「もう少し改善してから……」
「まだ何かが足りない気がする」
「もっとよくできるはず」
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完璧主義との戦い
私自身、20代の頃はこの完璧主義との戦いに明け暮れていました。
「いいものをつくれば売れる」
「完璧な内容を目指すべき」
そう信じて疑わなかった時期もありました。でも、それはただの思い込みです。完璧だから売れるわけではないし、時間をかけた分だけコストがかかります。なにより、売りどきを逃します。
20代のとき、テレビ番組本の企画で超目玉企画を手にすることができました。そのため、気合を入れて徹底的な取材と完璧な原稿を目指しました。でも、熱が入りすぎて制作に時間がかかり、競合他社に類似本を先に出されてしまいました。結果、話題性は他社に持っていかれてしまいました。最初に出せればニュースになったのに。
おまけに、制作コストはかさみ、売上は期待するほど伸びませんでした。この経験から学んだのは、完璧を目指すことと結果を出るかどうかは関係ないことです。あれから20年経った今も、悔しく思っています。
完璧主義がもたらす最大の問題は、機会損失です。いち早く世に出して改善を重ねたほうが、利益を得る機会は増えますし、結果としてユーザーに求められる「いいコンテンツ」になりやすいです。
完璧よりバランス
それ以降、コンテンツ制作における完璧主義をやめました。その代わり、公開可能と判断する基準を決めました。
1.全体に筋が通っているかどうか
- 起承転結で話がまとまっているか
- 読み手にとって「自分事」として受け取れるか
- 言いたいことに筋が通っているか
2.事実確認が取れているかどうか
- 情報の裏付けはとれているか
- 数字や引用は正確か
- 表記は統一されているか
これらが満たされていれば、リリースします。完璧を目指すよりも、世に出す速さと内容のバランスを見たほうが価値が生まれやすいですし、ユーザーに届けることのほうが大切だからです。リリースをためらって手元に持ち続けているのは、いつまでも妄想を握りしめているだけです。
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バランスをとるために時間管理をしっかりやる
コンテンツに価値があると感じてもらうために必要なのが、時間管理です。Webなら、つくる時間、公開する時間。更新タイミングを一定にし、「〇曜日にいつも更新されている」とユーザーに覚えてもらえるようにします。覚えてもらうことで、見る習慣をもっていただきたいからです。
- 更新頻度を決める(毎週月-金とか)
- つくる時間を予定として入れる(ほかの予定を入れない)
- 公開する時間を決める
重要なのは、無理のない時間と頻度を見つけること。計画的に進められる仕組みを予定に組み込んでおくことです。
完璧にしない代わりに、改善を重ねる
Webコンテンツは、紙の印刷物と違って、公開してもあとから修正ができます。ですから、コンテンツはとにかくまず公開。その後、必要があれば修正する。そのサイクルにしています。完璧を目指して公開を遅らせるより、まず公開して改善を重ねるほうが大事だからです。
そのために意識していることがあります。
1.出したコンテンツの反応を確認する
- アナリティクスでデータをチェックする
- コメントや反応をチェックする
- よく読まれている記事の特徴を分析する
2.次の施策に活かす
- 反応がよかった要素をメモしておく
- 次の記事にその要素を取り入れる
- 反応の悪かった要素は見直す
3.改善を続ける
- 人気テーマは違う視点で別の記事を書く
- ユーザーのニーズに合わせてさらに深掘りする
完璧を目指すことが必要なこともあります。掲載内容に関する事実確認、数値の正確さ、基本的な表記の統一です。それ以外の部分は改善可能と割り切ることで、よりすばやく、フットワークの軽い情報発信が可能になります。
なにより覚えておきたいのは、コンテンツがいいかどうかを決めるのは、ユーザーです。つくる側ではないのです。
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完璧主義より出し続けることを選ぶ
コンテンツ制作における完璧主義は、20代の私のように痛手を負うことのほうが多いです。大切なのは、
- 最低限の基準を満たす
- 決めた期日に公開する
- コンテンツを出し続ける
この3つです。完璧なタイミングは存在しませんし、完璧な内容も存在しません。むしろ、ユーザーの反応を見ながら少しずつ改善を重ね、途切れることなく発信し続ける。その積み重ねこそが、結果としてよいコンテンツを生み出します。