コンテンツは資産になる

一度コンテンツをつくれば何度も活用できる点が、コンテンツのすばらしい点です。コンテンツは単なる情報発信にとどまらず、長期にわたって価値を生み出し続ける資産になります。
本記事では、なぜコンテンツが資産になりうるのか、どのようにして資産価値をつくるのか、そして実際にどう活かせるかを、出版社時代の活用例を交えながら解説します。

コンテンツが資産として機能する条件
長期的な価値を生み出すコンテンツの特徴
コンテンツが資産として機能するには、以下のような特徴をもつことが多いです。

- 普遍性がある: 時間が経っても古くならない情報で、流行りに左右されない本質的な価値を持つもの
- 問題解決力がある: ユーザーの具体的な課題に対する解決策となるもの
- 独自の視点がある: 発信者独自の洞察や経験に基づいているもの
- 深い専門性がある: 表面的な情報ではなく、深掘りされた専門知識や経験による知見を含んでいるもの
自分の足でつかんできた情報や個人的な経験に基づく知識や情報は、この特徴をもつことが多いです。逆に言うと、それがないなら、コンテンツとしての独自性がなく、価値が低いとも言えます。
出版社の例:限られたリソースを最大限使い切る
出版社は古くからコンテンツを扱う専門集団です。限られたページ数の中でテーマについて徹底的な取材やリサーチを行い、最高の情報だけを誌面に落とし込みます。
誌面に採用できなかった情報はそのままにせず、ウェブサイトやSNS投稿用コンテンツとしても使います。取材時にスマホで撮った動画もコンテンツとして使ったり。印刷した記事はデータ化し、電子書籍として出したり、ウェブページや動画コンテンツの台本として再利用します。
一度作ったコンテンツを何度も使う
たとえば、私が出版社で働いていた頃、記事を次のように使っていました。
- 一次利用:雑誌の記事(紙に印刷)
- 二次利用:ウェブサイトのコンテンツとして再編集して公開(雑誌の販促用)
- 三次利用:SNS投稿用に編集して、投稿(雑誌の販促用)
- 四次利用:オンラインで反応のよいテーマは、ひとつのテーマで十分な量がまとまったら、別冊本として再編集・加筆して出版する(紙に印刷)
- 五次利用:さらに売れ行きがよければ、同テーマでセミナーを開催する
このほか、YouTube動画にもできると思います。ひとつの取材から生まれた情報を様々な形で使い、コンテンツを使い切ります。コンテンツがあると、一度作れば一次利用だけで終わらせず、二次利用、三次利用と展開していくことができるので、とても使い勝手がいいのです。

コンテンツを資産として使いまわす例
とはいえ、概念はわかっても、具体的にどう使うかわかりにくいので、例を考えてみます。たとえば料理雑誌の場合(いたことはないですが、例としてわかりやすいので)。シェフへのインタビュー取材を行った場合、そこで得た情報をどう使うかです。
- 雑誌掲載: 雑誌に核となるレシピと料理哲学を記事として掲載
- ウェブサイトに掲載: 誌面に掲載しきれなかった裏話や詳細なテクニックを雑誌のサイトで公開。これは雑誌の販促にもなります
- SNSに投稿: 料理の映えるカットや印象的なシーンをInstagramやX(旧Twitter)で投稿。これも雑誌の販促になります
- 動画に投稿: 取材時の調理風景や、インタビュー動画をYouTubeチャンネルに公開。これも雑誌の販促になります
売りたいものが雑誌だった場合、雑誌の公式サイトや購入ボタンにつなぐことで、すべての投稿が雑誌の販促になります。
これにより、一度の取材コストで複数のメディアに展開し、それぞれのプラットフォームに適した形で情報を届けることができるので、非常に効率がいいのです。
自社サイトに来るユーザーは、ブックマークをしているか、通りすがりの検索流入ユーザーか、メルマガ登録者ぐらいです。雑誌本体の新規読者を獲得するためにも、あらゆる場所にコンテンツを投稿します。こうしてSNSやYouTubeに投稿し続けることで、新しいユーザーとの接触機会を増やすことができます。

これは雑誌に限らず、インターネット上で認知・集客を目指している場合は、同じことが言えます。
「ウチにはコンテンツがない」と嘆く会社にも、ある
「ウチにはコンテンツがない」と思っている会社は多いのですが、価値ある情報は必ずあります。社内資料を社外に出していいコンテンツに転嫁させることは、企業のコンテンツ制作でよくやることのひとつです。
コンテンツになりやすい例
- 社内研修資料
- 会社案内
- マニュアル
- 長年在籍している社員の話
ある企業では、社内で使っていた製品マニュアルや技術資料を一般化して再編集し、ウェブ用にコンテンツ化しました。専門性の高い情報を一般向けにかみ砕いて提供することで、業界内での信頼性を高め、新規顧客の獲得につながると考えたからです。実際に、問い合わせは増えました。
とくに社内研修用の資料は、社内で「知っていて当然」の情報が集まっていますが、これこそ外部の方にとっては貴重な知見となる可能性が高いです。公開できる範囲を絞ってコンテンツ化すれば、機密も守れますし、自社の特徴や他社との差別化を伝えやすくなります。日常の業務の中に埋もれている情報こそ、大きな資産となりうるのです。
それから、社長や人事部長が推薦する在籍年数が長い社員の方の話を伺うと、「なるほどそういう理由で長年在籍を」という納得感ポイントがあります。その方がその会社に「長くいたい理由」「長くいられた理由」にも、会社の核となる情報があったりします。やる気がない社員がだらだらいるだけ、という話もたまにありますので、2-3人に伺うと安心です(笑)。

コンテンツを使いまわす4つのコツ
1.メディアの特性に合わせて見せ方を考える
コンテンツをうまく使っている個人や企業に共通しているのは、各メディアの特性をよくわかったうえで、投稿する内容や見せ方を最適化している点です。
同じ情報でも、紙媒体では詳細な解説と図表を、SNSでは印象的なワンフレーズと画像を、動画では視覚的に伝わりやすい実演を、というように、メディアごとの強みを活かした形に変換できると、ひとつの情報から多様な価値を生み出せます。
2.各プラットフォームのユーザーニーズを理解する
重要なのは、各プラットフォームを利用するユーザーが何を見たいかをよく理解し、ニーズに合った情報提供が必要な点です。
たとえば、商品情報を掲載する際は、メディアによって見せる部分の切り分けが必要になります。たとえば美容液を紹介したい場合、以下のように見せ方を変えます。
- Instagram:美しいビジュアルと雰囲気、インフルエンサーや社員のコメント
- X(旧Twitter):わかりやすい特徴と差別化のポイント
- YouTube:使用感や使用者の声、実際の使用シーン、テクスチャーの紹介
- ブログ:使い方や商品仕様、使用者の声など

このように、ユーザーが各プラットフォームで求めている情報の形態はそれぞれ。場に合わせた投稿が必要なことを理解し、同じ基本情報からユーザーニーズに合わせたコンテンツに加工し直せるかどうかが、情報を使いこなす重要なポイントです。
3.ユーザー層に合わせた情報の再構成・再編集
コンテンツを使いこなすカギは、ただくり返し使うのではなく、再構成・再編集することで新たな価値を付加し続けることにあります。
たとえば専門的な解説記事を、初心者向けの「超入門ガイド」に再編集したり、上級者向けの「深掘り解説」として膨らませたりすることで、同じ基本情報から異なる価値を引き出すことができます。
4.第三者視点での価値の見直しの機会をつくる
多くの場合、自社や自分自身の強みは、当事者にはあたり前すぎて見えにくいものです。ここで取り入れたいのが、第三者視点による客観的な価値の見直しです。
外部のライターやコンサルタントなど、第三者の目を通して自社の強みや特徴を言語化する機会を設け、これまで気づかなかった価値を見直してみるのもひとつの手です。たとえば、自社サイトの記事を3~4本外注先に依頼してみるとか。
依頼された側は何に視点を絞るかを知るために、ヒアリングを実施します。1-2本であれば、すでに自社内で認知されている「基本情報」をまとめて終わりになる可能性が高いですが、3本以上の記事をつくることになると、より深く話を伺わないと3~4本分の企画は出しにくいです。となると、丁寧に深掘りして、お話を伺うことになります。
私がコンテンツ制作に関わらせていただくときも、クライアントの「あたり前」を丁寧に掘り下げることから始めます。すると「そんなことまでコンテンツになるの?」と驚かれることが多いです。当事者には見えない価値が、第三者の目には明らかに映るからです。
もうちょっと書きたいことがあるので、続きは明日にします。
▼続きを書きました
