「何を書けばいいかわからない」とき、自分史を書いてみる

ブログで書きたいことが見つからないとき、昨日はキーワードを設定する話を書きました。それとは別に、個人事業主や経営者の場合、自分史の振り返りを書いてみることもおすすめです。
自分史を書くと、自分の経験や歩みを整理して発信する土台にもなります。その価値について今日は書いてみます。

散らばった自分の足跡を集める意義
独立して仕事をする個人事業主や経営者は、自分の経験や知識を断片的にあちこちで発信しています。インタビュー記事、SNSの投稿、ブログの記事など、あちこちに。この点在する情報をひとつの線で結ぶと、自分の強みを語る起点のひとつになります。
ある個人事業主の方Yさんの場合も、そうです。外部のインタビュー記事やブログに、経験や知識が散りばめられていました。これを今現在のYさん視点でまとめ直し、一貫したストーリーとして発信します。
すると、できた記事は、Yさんに仕事を依頼しようか迷っている方にとって、依頼していい人物かどうかの判断材料になります。「Yさんにお願いすると、Yさんが実践したように、自分にもできるかもしれない」と感じてもらうこともできます。
とくに、独立した経緯や、会社員時代の葛藤、そして現在に至るまでのプロセスを語ることは、同じような悩みを抱える人々にとって大きな励みになります。実感のこもったリアルな体験談は、お客様との信頼関係を築く第一歩になりやすいからです。
自分史が伝える専門性と信頼性
たとえば、ウェブマーケティングの上流工程や、SNSコンサルティングなど、なにか専門性が高い無形サービスを提供する場合、提供者である人物がどのようにその分野で経験を積み、知識を深めてきたかを示せると、信頼感をつくることもできます。ただ“言っている”だけではなく、ちゃんとやってきたことが伝わるからです。
自分史を実際に書いてみるとよくわかりますが、なぜ私がクライアントのお手伝いができるのか、どのような独自の価値を提供できるのかが自然と伝わりますし、やりたい理由も伝わります。
ある一定のスキルを獲得してきた方の経緯は、ただの資格の羅列にはなりません。迷いや葛藤もあり、それらをなぜ必要と思ってどう取得し、実践してきたか。そのストーリーがその方らしさを醸し出すことにもなりますし、結果的に専門性と信頼性を裏づけることになるからです。
「こんなことをやってきた」という自分史は、ブランディングの核となり、同業者との差別化にもなるのです。

自分史をまとめると、一貫性と個性が浮かび上がる
自分の経験を振り返ってまとめる作業には、思わぬ発見もあります。自分のキャリアがあちこち行っていたとしても、一見バラバラに思える経験やキャリアも、俯瞰してみると一本の線でつながっていることがわかります。
その一貫性こそが、自分という個性であり、ビジネスの核となる価値観です。
たとえば私の場合、
- 編集プロダクションで実用書編集
- 芸能系の単行本編集・芸能雑誌編集
- 人材会社のウェブ編集
- 出版社でディレクター→EC運営・システム開発
- デジタルマーケティング全般
というキャリアに結果的になっていますが、共通しているのは、この3点です。
- 絶対出版社で働きたい
- 他人の思惑(人事異動)でキャリアを断絶させたくない(専門職志向だったので)
- 自分が手がけた本を、意図的に計画して細く長く売るためのノウハウを身につけたい
ですから、全体のキャリアを見ると脈絡がないように見えるかもしれませんが、私にとってはこの3点が常に根底にありました。それを経て、今の仕事のありかたや、仕事の質を担保する背景になっています。

自分史は未来の自分を支える力になる
自分を振り返る文章を書いておくことは、未来の自分への励ましにもなります。とくに事業の節目やつらかった時期に、自分のなかでどう咀嚼して、今に至ったかを書いておくと、あとで読み返したとき、新たな勇気やモチベーションの源にもなります。
外に文章として出すことは、恥をさらすことにもなりますが、恥と感じていることを言葉にしてみると、単なる捉え方の問題と気づくこともあるので、気持ちの整理もできて、思いのほかすっきりします。
たとえば、この記事。当時は悲しくて情けなくてわりと泣きました(笑)。でも、今となっては、笑い話です。私自身の戦略設計ミスだったと思いますし。

自分史をせっかく書くなら、自分の得手不得手を文章にして書き出しておくこともおすすめです。「私は〇〇が得意で、△△は苦手だ」と明文化しておくと、未来の自分が迷ったときの判断材料にもなります。迷うときは、だいたい正気ではありませんので(笑)。

自分の試行錯誤の過程を記事にする
挫折や失敗の経験も含めてブログに書くことは、ユーザーに人間らしさに共感し、より親近感をもってもらいやすいです。他人の試行錯誤の過程は、その人らしさが垣間見えて興味深いですし、読み物としてもおもしろいからです。完璧な成功物語は、正直読み物としてもおもしろくありません。
実体験を含めながら、自分の仕事や本質を伝えることは、お客様にとってより具体的にサービスのイメージをもってもらうきっかけにもなります。自分の仕事に対する哲学を自分史と絡めて語ることは、共感してもらえるお客様との出会いが生まれやすくなりますし。
実際、私も自分の弱みや失敗、いろんなことをこのブログに書くようになりましたが、それらを笑って受け止めてくださる、気の合うお客様と出会う機会が増えました。書いたときは誰にも読まれないと思って書きましたが、意外と読まれてて草、です(とくにリアル知人)。

自分を知ることから始まる情報発信
「何を書いたらいいかわからない」という悩みの解決策は、シンプルです。まずは自分自身を振り返り、これまでの経験や学びをまとめることから始めます。具体的には、以下のような問いかけから始めます。
- なぜ起業やビジネスの道を選んだのか
- どのような困難に直面し、どう乗り越えたか
- その過程で得た特別な気づきや学びは何か
- 今のビジネスの形をつくる転機はいつだったか
これらの問いに答えていくうちに、自分にしか語れない物語が浮かび上がってきます。その物語こそが、理想のお客様の心を動かし、自分のサービスや提案に興味を持ってもらうきっかけになります。

普段忙しいと、自分を振り返るきっかけもないと思いますが、やってみると次のビジネスの種を見つけることもあります。
自分の物語は、最も価値ある発信になる
「何を書いたらいいかわからない」という悩みが浮かんだときの打開策として、自分史をひとつの選択肢に挙げてみてください。点在する自分の足跡を集め、一貫したストーリーとして語ることで、自分の専門性と信頼性が伝わり、お客様との共感が生まれやすくなります。
自分がどう成長し、今のサービスを提供できるかが伝わる自分史は、書いてみると個人事業主や経営者にとって最も強力な発信コンテンツになり得ます。それは外向きの発信としてだけでなく、未来の自分へのメッセージやモチベーションの源泉にもなりますから。