「自分らしさ」を見つける4つのワーク
前回の記事では、「なぜ自分の『らしさ』に気づけないのか」という課題と、時系列で振り返るワークについて書きました。
「自分らしさ」はひとつの方法だけでは見つけにくいもの。様々な角度からアプローチすることで、少しずつ見えてきます。本記事では、残り3つのワークを通じて、あなただけの「自分らしさ」を見つけていく方法を、実際のコンサルで出た例を交えながらご紹介します。
ワーク2:言葉を集める
「自分らしさ」は日常の言葉の中に隠れています。その言葉をあぶりだしていきます。
【準備するもの】
・ノートかメモ帳
・ペン
・時間:15分程度
【手順】
以下の3つの視点で、思いつく言葉を書き出していきます。
- お客様からよく言われる言葉
- 自分がよく使う言葉やフレーズ
- 商品・サービスの説明で譲れないポイント
【言葉を集めた実例】
コンサルタントをしているFさんの言葉集めをしてみたところ、こんな発見がありました。
■お客様からよく言われる言葉
・「いつも丁寧に説明してくれる」
・「話を最後まで聞いてくれる」
・「細かいところまで気がつく」
■自分がよく使う言葉
・「確認させてください」
・「もう少し詳しく教えていただけますか」
・「一緒に考えていきましょう」
■説明で譲れないポイント
・「お客様に寄り添った提案」
・「無理のないペース」
・「継続的なサポート」
一見バラバラに見えるこれらの言葉たち。でも、並べてみると「丁寧さ」「傾聴」「継続性」というキーワードが浮かび上がってきます。これこそが、Fさんの「自分らしさ」を形作る要素であるとわかります。
ワーク3:価値観の棚卸し
次は、より深い部分に目を向けるワークです。
【準備するもの】
・付箋
・大きな紙かホワイトボード
・時間:30分程度
【手順】
以下の質問に対する答えを、思いつくまま付箋に書き出し、貼り付けていきます。
- 仕事をする上で大切にしていることは?
- どんなときに「やりがい」を感じる?
- 「これだけは譲れない」と思うことは?
- 「こんな仕事はしたくない」と感じることは?
【価値観の棚卸しの実例】
ある商社でマネージャーを務めるWさんの付箋を整理したところ、こんな特徴が見えてきました。
■大切にしていること
・「急かさない」
・「一人ひとりのペースを守る」
・「無理のない提案をする」
■やりがいを感じるとき
・「お客様が自分のペースを取り戻せた」
・「慌ただしい状況が落ち着いた」
・「継続的な関係が築けた」
■これだけは譲れない
・「お客様の状況を十分理解すること」
・「結果を急がないこと」
・「安易な提案をしないこと」
これらの言葉をグルーピングしていくと、ひとつの重要な価値観が浮かび上がってきました。「時間に対する価値観」です。
Wさんの会社は、「時間をかけることの大切さ」を深く理解し、それを強みとしていたのです。世の中が「速さ」や「効率」を求める中、あえて「じっくりと」「お客様のペースで」というアプローチを選択しています。
一見ビジネス的にはデメリットにも思えます。ですが、この「ゆっくりと、でも着実に」という姿勢こそが、それを望むお客様から支持される理由となっていました。同時に「とにかく早く!」というお客様から選ばれない予防線にもなっていたのです。
ワーク4:対話形式での深掘り
最後は、信頼できる人との対話を通じて、自分では気づきにくい「自分らしさ」を見つけるワークです。
【準備するもの】
・信頼できる対話相手(同業者、メンター、親しい友人など)
・メモ帳
・時間:30分~1時間程度
【進め方】
以下のような質問を相手に投げかけてもらいます。
- 「私のどんなところが印象的ですか?」
- 「私の仕事のやり方で、特徴的だと感じることは?」
- 「他の人とどこが違うと思いますか?」
【実際の例】
ディレクターのAさんが長年のお客様に、雑談がてら質問を投げかけてみたところ、思いがけない発見がありました。
「いつも最後に『ここまでの内容を整理しますね』って確認してくれるじゃないですか。あれ、すごくわかりやすくて助かるんです」
Aさんにとっては、あたり前の習慣の「内容の整理」。でもお客様にとっては、それがAさんならではの価値として受け取られていたのです。
さらに、
「メールの最後に、いつも次のステップを書いてくれる」
「報告書に必ず具体的な行動プランがある」
など、Aさんが意識していなかった「特徴」も見えてきました。
つまり、Aさんの「自分らしさ」は、
・情報を整理する力
・次の行動を明確にする力
・相手の理解に寄り添う力
にあったとわかりました。
4つのワークで見つけた「自分らしさ」を活かすために
ここまでの4つのワークを通じて見つけた「自分らしさ」。ワークを通じて、自分自身が大切にしている価値観を言葉にすると、一貫性や共通点が出てきます。それを自分なりに「価値」として整理し、活用していくことで「自分らしさ」を仕事の強みとしても使っていくことができます。
4つのワークから出た答えをもとにまとめてみると、こんな言葉で表現できます。
■時系列の振り返りで見えてきたこと
「人の役に立ちたい」という一貫した想い
■言葉の収集から見えてきたこと
「丁寧さ」「傾聴」「継続性」という特徴
■価値観の棚卸しで気づいたこと
「時間の価値」を大切にする姿勢
■対話から発見できたこと
「整理する力」「次の行動を明確にする力」
言葉すると、何の変哲もない普通のことに思えるかもしれませんが、行動パターンや思考の出発点のようなものが、言葉になっていると思います。それが、「自分らしさ」にもなっているのです。人の言動の出発点やモチベーションはそれぞれ違います。それを言葉にすることで、その人の行動パターンやモチベーションの発火点が言葉になる、みたいなイメージです。
私の場合は、「根本的な解決に向かう」「行動が速い」「他者の意図を読み解く・引き出したい」とか、そんな感じです。
「自分らしさ」は提供価値そのものである
くり返しになりますが、「自分らしさ」とは、提供できる本質的な価値になります。
だからこそ、
- 無理に変える必要はない
- 消す必要もない
- 誇張する必要もない
- 自然にしていることをそのままする
ただそれだけです。自分にとって無理のない形で価値を届ければいいのです。それは言葉にしないとわかりません。自分がわからないものは、他の方にもわかりません。だからこそ、形にする必要があります。
実際のビジネスでどう活かすのか、具体的な行動に落とし込んでいくことが大切です。私はここを価値として整理できていなかったので、それを便利な特技として使ってしまい、結果的に「何でも屋」になってしまっていたわけです(笑)。
次回は、見つけた「自分らしさ」を実際のビジネスで活かすための具体的な方法についてもまとめてみます。