「三方よし」な仕事の見つけ方
仕事との向き合い方が少しずつ変わってきました。とくに強く感じているのが、「三方(さんぽう)よし」の大切さです。これまではそれほど意識しなくても、だいたい三方よしである仕事が多かったのですが、勤めていた会社の看板がなくなると、いろんなことが起こります(笑)。
なぜ「三方よし」がいいのか
仕事をしていくなかで、私が考える「いい仕事」とは違う価値観の方に出会うことがあります。
たとえば、外注先を単なる丸投げ先と考える方や、プロジェクトの途中で条件を大きく変更してくる方、お客様からお金を集めることだけを重視する方もいます。また、最初に合意した予算内で要件定義をしたにも関わらず、確定後に追加予算なしで追加業務を上乗せされることもあります(まじでやめて)。
以前は「しっかり価値提供ができれば私自身の成長になる」と考え、自己犠牲を払ってでも応えようとしたこともありました。でも、それは結果的に私自身の心が折れることになります。それに、私が我慢すればいいという考えは、実は誰の利益にもなりません。
何より、結果的にクライアントの利益を損ないます。マーケティング施策を立てる私が、その会社のサービスをお客様に勧めたいと考える事実や根拠、私自身の確信さえも失われていってしまうからです。
マーケティング戦略には、戦略を立てる人の心が大きく左右します。確信をもった人の施策は強いです。その確信を持ち続けられる関係性が、本当の意味での価値を生み出せる基盤になるからです。
私が考える「三方よし」とは、世のために「いいサービス」を届けたいと考えている方が、自分のお客様に価値あるものを提供し、その結果としてお客様もクライアントも幸せになる。そして、それをお手伝いした私も幸せになる。そんな状態のことです。
一時的な利益やその場しのぎの解決策ではなく、すべての関係者にとって本質的な価値を生み出せる仕事。そういう仕事との出会いを大切にしたいと考えています。
具体的な「三方よし」の中身
具体的に「三方よし」は、以下の3つの要素が揃っている状態を指します。
【クライアントにとって】
- 本質的な課題が解決できる
- 一時的な改善ではなく、長期的な成果が期待できる
- 仕組みとして継続的に機能する
【クライアントのお客様にとって】
- 真に価値のあるサービスや情報を受け取れる
- 適切な価格で必要なものが手に入る
- 継続的に良い体験ができる
【私自身にとって】
- 得意分野で確かな価値を提供できる
- やりがいを感じられる
- 適切な報酬をいただける
「三方よし」かどうかのチェックポイント
今は仕事をお引き受けする前に、以下の点を確認しています。
【クライアントにとってのゴール】
- 具体的に何を実現したいのか
- どんなお客様が対象顧客か
- いつまでに実現したいか
- 予算と要件のバランスは適切か
【クライアントのお客様にとっての価値】
- どんな課題が解決できるか
- なぜそのサービスがお客様に必要とされるか
- 類似サービスと比べての特徴は何か
- お客様にとって適切な価格設定か
【私が提供できる価値】
- 私の強みやスキルが活かせるか
- 本質的な解決につながるか
- (あるいは)クライアント自身が継続的に運用できるか
- 自己犠牲なく価値提供できるか
これらの要素を確認することで、お互いにとって価値ある仕事かどうかが見えてきます。
断るときの条件も決めています
ときには、お断りすることも必要です。たとえば、
- クライアントの本質的な課題に応えられない
- クライアントのお客様に対する価値提供が不明確
- 自分の得意分野とのミスマッチがある
- 予算と要件のバランスが取れない
- プロジェクトの進め方に不安がある
- コミュニケーションに不安がある(約束を守らない、否定から入るなど)
こんなときは、丁寧にお断りするようにしています。その際は、
- 現状での課題をお伝えする
- なぜお受けできないかの理由を説明する
- 可能であれば代替案を提案する
- 他の選択肢やリソースの紹介する
お断りする場合も、できるだけ相手にとって何らかの価値ある情報や方法をお伝えできるよう心がけています。心が折れたときは、そうはいかないこともありますが……。
迷いがなくなるし、心温まる仕事が増える
「三方よし」の仕事を見つけることは、簡単ではありません。でも、この基準があることで、迷わず判断ができるようになりました。
仕事のご依頼をいただいたとき、まず考えるのは、「このサービスは、本当にクライアントのお客様の役に立つだろうか」ということです。そして「クライアントは、本気でいいサービスを届けたいと思っているだろうか」「私自身が、確信を持って価値を提供できるだろうか」も併せて考えます。
この3つの問いに胸を張って「YES」と答えられる仕事。それが私の考える「三方よし」です。お客様の課題を解決したい真摯な思いを持つクライアントと共に、本質的な価値を届けていく。そんな仕事との出会いを、これからも大切にしていきたいと思います。
ここまで言語化するのにずいぶん時間がかかりましたが、こういうことが独立して穏やかに仕事を続けるコツだよねえ……と最近は思っています。